コワーキングスペースとシェアオフィスの本当の違い

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コワーキングスペースとシェアオフィスの違いを検索すると、長年このビジネスに取り組んできた私たちの認識とは、違う説が有力とされています。

その違いとは、コミュニティ運営に力を入れているかどうかです。

コミュニティ運営に力を入れている場合は、コワーキングスペース、入れていない場合はシェアオフィスという分類です。

しかし、この分類、私たちからはまったく的外れに見えます。このような勘違いは、別に害がないのであればそれでいいのですが、おそらく事業者側からも、利用者側からも、混乱の原因になっています。

そこで、シェアオフィスとコワーキングスペース違いを私たちがどのように考えているのか、その論拠は何かを示しながら、本当の違いについて明らかにしていきたいと思います。

コワーキングスペースとシェアオフィスの定義

先に結論を書いてしまいますが、コワーキングスペースとシェアオフィス、それぞれ次のように定義できます。

コワーキングスペースとは、toC向けの個人利用者を主なターゲットにした会員制レンタルオフィス事業です。一方でシェアオフィスは、toB向けで法人を主なターゲットにした月額制レンタルオフィス事業です。

以下、なぜそのように考えるべきかを整理していきます。

そもそもコワーキングスペースとはなにか

 まずは、コワーキングスペースとはどのようなサービスに使われる名称か検討していきます。

コワーキングスペースには、以下の構成要素があります。

  • 一人で集中して仕事をするためのデスクエリア
  • 打ち合わせをするための会議室
  • 会員同士の交流が可能な共用部

上記に加えて

  • テレワークが可能な防音ブース
  • 会員が独占利用できる専有エリア
  • 会社の登記上の住所としても利用できるバーチャルオフィス
  • 工作機械など高価な機材のレンタル

などが利用できる施設もあります。

このよう施設を、月額会議を支払って利用するサービスが、コワーキングスペースです。

コワーキングスペースは、フリーランスや小さな会社にとって、便利なオフィス機能を総合的に提供するサービスと言えるでしょう。

シェアオフィスはどこから来たのか?

続いてシェアオフィスについて見ていきます。

実は、日本では2000年頃、シェアオフィスという名称では呼ばれておらず、レンタルオフィスという名称が普及していました。家具やプリンタ、ネットワーク環境などと共に、月額家賃で貸し出すオフィスのことです。

ちょうどこの頃、賃貸住宅を共同で利用することをシェアハウスと呼ぶようになります。それまでは、一つの部屋や一軒家を共有する借り方をルームシェアと呼んでいたのですが、需要の高まりから不動産業者がルームシェアを前提とした開発を行うようになります。そのときに使われた言葉がシェアハウスでした。

シェアハウスという呼び名が一般化すると、その流れを受けて、レンタルオフィスもシェアードオフィスなどと呼ばれ始めます。

そして、2018年のWeWork日本進出以降、その他の大手企業がこの業界に参入して、使い始めた言葉が「シェアオフィス」です。

ですから、シェアオフィスは基本的にはレンタルオフィスのアップグレード版ということになります。

シェアオフィスは、大きな間取りの物件を、小さな企業が利用できるようにパーティションなどで専有エリアを分割し、家具付き、会議室付きで貸し出す業態を指すことが多いです。また、レンタルオフィスよりも、コミュニティ運営に力を入れているところが多いように思います。

この意味において、コミュニティ運営の有無がコワーキングスペースとシェアオフィスの違いであると考えることには無理があると思います。

コワーキングスペースは2010年代に入って使われるようになりました。コワーキングスペースという言葉が徐々に日本で使われ始めたのには、アメリカの言葉の影響をうけていることが考えられます。実はアメリカでは、グーグル検索で「シェアオフィス」が一般的な言葉としてあまり使われておらず、シェアオフィスもコワーキングスペースも “Coworking Space”と呼ばれています。このアメリカの影響を受けて、日本でも現在コワーキングスペースという言葉の方が一般化してきたのだろうと思われます。

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コワーキングスペースとシェアオフィスの施設面での違い

コワーキングスペースとシェアオフィスの施設面での違いを改めて整理します。

コワーキングスペースは、共用部の設備が充実していることが多く、シェアオフィスは、共用部が相対的弱くなり、専有部が充実する傾向にあります。

これは、客層の違いによるところが大きいと思われます。

フリーランスなどの個人向けでは、専有部の重要性が下がり共用部の充実が求められます。一方で法人では、グループで仕事をするため、相対的に専有部の重要性が上がります。

これらの事から、日本では法人向けがシェアオフィス、個人向けがコワーキングスペースと捉えた方が、より実態に近いと思われます。

個性的なレンタルスペース

近年は、シェアオフィス、コワーキングスペースの他に、個性的なレンタルスペース/シェアスペースが展開されるようになってきました。
一部事例をご紹介します。今後もいろんな個性的なスペースがシェアされるようになると思うので、とても楽しみです。

① クラウドキッチン
Uber Eatsなどの出前事業のニーズが高まり続ける中、お客様が食べるためのイートインスペースを持たない、調理だけできる施設です。コストを抑えて開業できることが最大の特徴です。

② 託児所付きコワーキングスペース
子育てをしながら仕事をする人にとって、託児所があるかどうかは、大きな付加価値になります。託児所を付けることで、より気軽にシェアオフィスへの出社を可能にします。

③ クリエイター特化シェアオフィス
クリエイターなど、特定の業種の法人しか借りることのできないシェアオフィスです。業種を絞ることで、コミュニティの形成が容易になるのが特徴です。

④ コ・ダンシングスペース
ダンサーが気軽にダンスを練習できるシェアスペースです。初期投資がほとんどかからないのが特徴です。

まとめ

ここまで、コワーキングスペースとシェアオフィスの違いを、その歴史から紐解き、言葉の定義を改めて行いました。

繰り返しになりますが、
コワーキングスペースとは、toC向けの個人利用者を主なターゲットにした会員制レンタルオフィス事業であり、シェアオフィスは、toB向けで法人を主なターゲットにした月額制レンタルオフィス事業です。

実態に沿った、語句の定義の理解が進むことを願っています。

詳しくは、ホワイトペーパーにて解説していますので、ぜひ御覧ください。